高血圧症
2014年(JSH2014)から5年ぶりに高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)が日本高血圧学会より発表され、成人の降圧目標が130/80mmHgに引き下げられました。これは、より厳格な降圧により心・脳血管イベント(心筋梗塞や脳梗塞・脳出血)を減らす効果が世界の大規模な臨床試験にて示されたからです。
このため、血圧が140台で少し血圧が高いけど放置している方も、とくに治療を検討する必要があります。
正しい血圧の測定方法
できれば1日2回(起床後1時間以内と、就寝前)、測りましょう。
測定中は力まず安静な、リラックスした状態を保ち、おしゃべりもしないようにしましょう。とくにカフはひじの関節部にかからないように、ひじの内側のくぼみから1~2cm上で巻きます。服の上から測るのも、よくありません。
健康診断で血圧の上昇を指摘されるも、放置している方もおられるのではないでしょうか?
血圧の上昇は飲酒・喫煙・塩分摂取・体重増加など生活習慣からも生じますが、多くの方は遺伝(家族性変化)や加齢変化によるものです。血圧が高いけど症状もないからと、放置している方は要注意。数年後に突然、心臓や脳に大きな問題がおき後遺症が出てからでは遅いのです!!
高血圧がもたらす『脳』疾患
脳出血・クモ膜下出血
高血圧で硬化した脳の細動脈に圧力がかかり、血管が破裂し強い頭痛が起こります。命にかかわる状態です。クモ膜下出血などは働き盛りの40〜50歳代にも生じることもあり、要注意です。
脳梗塞
動脈硬化で血管の内側が狭くなったところに、血栓ができて血管がつまり、血液が流れなくなります。呂律が回らない、しゃべりにくい、手や足に力が入らない、手足が動かない、しびれる、などの症状がみられます。
高血圧がもたらす『心』疾患
狭心症
心臓を取り巻く、心臓の栄養血管の冠動脈が狭くなり、心臓を動かすための血流が不足する「心筋虚血」が起こります。 突然、胸を締めつけられるような痛みや圧迫感を感じますが、この症状は数分、長くても15分程度でおさまります。
心筋梗塞
心臓の栄養血管である、冠動脈が完全にふさがって血流が途絶えますので、その部分の心筋は壊死します。激しい胸の痛み、呼吸困難、冷や汗、吐き気などの症状があり、長時間続きます。 命にかかわる状態です。
高血圧の薬を飲みだすと一生のまないといけないと、億劫に考える方もおられるのでは?
これは誤解です。血圧は季節変動や日内変動をしており、季節や体重の減少によっては、内服薬の減量、中止や休止も可能な場合もあるのです。
血圧は季節により変動する
血圧は、一般的に夏場に下降し、冬場に上昇します。その主な原因は気温です。気温が高いと、血管が拡張するため、血圧が低下します。特に、夏場は汗をかく量が増えて塩分と水分が体外に排出され、体内の血液量が減ることで血圧も低下しやすいです。
一方、気温が低いと、自律神経の中でも交感神経の働きが活発になり、血管を収縮させ、血圧を上昇させることにより体温を維持しようとします。また冬場は塩分の多い食事をとることが多く、体内に水分が貯まりやすいことや、運動量が減って体重が増加しやすいことも血圧が上昇しやすい原因となります。
このように血圧が安定しやすい夏場は、内服を休止できる方もおられますので、年間を通じ医師と相談しながら血圧を良い状態に維持することが大切です。
1日の間でも血圧は変化します
多くの方は、血圧値は昼間よりも夜間(就寝中)に低下し、起床前から起床後にかけて上昇するという変動パターンを示します。夜間の血圧値は昼間の血圧値に比べて10~20%ほど低くなります。しかし血圧の日内変動が異常をきたし、①昼間から夜間の血圧低下率が10%未満しかない型、②夜間の血圧低下率が20%を超えて極端に下がる型、③逆に昼間より夜間の血圧値が上昇する型というパターンもあります。
①昼間から夜間の血圧低下率が10%未満しかない型と、③夜間の血圧値が上昇する型は、正常パターンの方に比べて脳卒中や心筋梗塞などが起こる危険性がとくに高いことがわかっています。
降圧薬の内服のタイミングは、血圧の上昇するパターンをみて医師と相談しましょう。
まずは毎日、自宅で正しい方法で血圧を測りましょう。 そして血圧が少しでも高ければ、放置せずに必ず受診して、治療の必要性の有無について相談してください。