step
ALT(GPT)… 脂肪肝度をチェックする

健康診断で肝酵素検査のAST(GOT)、ALT(GPT)、γ‐GTP等の項目が正常値をオーバーし「肝障害あり、再検査してください」と報告が来たけども、毎年の事だし、普段からお酒飲んでいるし、症状もなにもないし、面倒くさいからこのままほっておこう・・と思っている方はおられませんか?
でも放置はいけません!肝臓の異常には、放置していると恐ろしい結果を招く場合もありえます。
AST、ALT↑(肝実質の障害を反映)、γGTP↑(アルコールや脂肪化、胆道系の異常を反映)ALP↑(胆道系の異常を反映)、総ビリルビン↑(黄疸を反映)、ChE↓、血小板↓(肝実質の障害を反映)などがあります。肝機能異常の原因には、アルコールや脂肪肝、肝炎ウイルス、薬剤、自己免疫などがあります。まずは、放置せずご自身の健診結果を見返してみてください。


step

step

step

| AST(GOT) | ALT(GPT) | |
|---|---|---|
| 高度 | 劇症肝炎、中毒性(薬剤性)肝炎、心筋梗塞 | 劇症肝炎、中毒性(薬剤性)肝炎 |
| 中等度 | 急性肝炎、慢性肝炎、肝臓癌、アルコール性肝炎、心筋梗塞、筋ジストロフィー症 | 急性肝炎、慢性肝炎 |
| 軽度 | 慢性肝炎、肝硬変、肝臓癌、閉塞性黄疸、アルコール性肝障害、心筋梗塞、皮膚筋炎など | 脂肪肝、慢性肝炎、肝硬変、アルコール性肝障害 |
A型、E型肝炎は食事を介した経口感染であり、急性肝炎(微熱、黄疸、倦怠感)を生じます。一方、B型、C型肝炎は血液を介した感染で慢性肝炎に至ります。急性肝炎は症状を伴いますが、慢性肝炎は症状なく経過し、確実に肝臓は徐々に傷ついて肝硬変や肝臓がんを発症していきます。このためウイルス性肝炎については、肝炎ウイルスの血液検査を受けていないと、知らないうちに肝硬変や肝臓がんを発症し、発見も遅れて気づいた時にどうしようもない状態である可能性も高いのです。


B型肝炎ウイルスは現在日本に110~140万人の感染者がいるとされ、比較的感染性の強いウイルスで、その感染力はHIVの100倍とも言われます。B型肝炎ウイルス(HBV)は出産時(母子感染)や性交渉時、で感染することが分かっています。また、1960年代までは売血制度があり、輸血や集団接種(1948年~1988年)で感染した場合もあります。HBVに感染すると、肝硬変や肝臓がんにかかるリスクが高くなり、とくにウイルス量(HBV-DNA量)が多ければそのリスクはさらに高まります。HBVの厄介なところは、一度感染すると体内から完全に排除するのはまず困難であることです。

慢性肝炎が進行するうちに肝硬変や肝臓がんを発生させてしまいます。いったん、肝硬変に至るともう肝臓は元気な状態に戻ることはありえません。

前述のとおりHBV感染者にはウイルスを完全に排除(根絶)する治療法はないため、ウイルス量を減らす治療がメインとなります。HBVウイルスを減らす治療は、インターフェロン(注射)又は核酸アナログ製剤(内服薬)となり、基本的には長期間の継続治療が必要です。現在は核酸アナログ製剤(内服薬)が主流で、1日1回の服用にて高確率(90%)で肝炎ウイルス量を減らすことができます。
現在、B型肝炎の治療などには、都道府県の医療費の助成制度があり、この受給証による助成制度を利用することで、ウイルス肝炎の治療費用は月額1-2万円まで軽減することが可能となっています。当院長は肝臓専門医であり、受給者証の診断書作成も行っております。
| 名称 | 略語 | 「陽性の場合」の意味 |
|---|---|---|
| HBs抗原 | HBs-Ag | 現在HBVに感染している状態を意味します |
| HBs抗体 | HBs-Ab | 過去に感染し、現在はすでに治癒した状態です |
| HBc抗体 | HBc-Ab | キャリアからの発症で高力価となり、HBVの急性感染の早期では低力価になります |
| IgM-HBc抗体 | IgM-HBcAb | HBVの感染後の早期に出現し、感染有無の指標となります |
| IgG-HBc抗体 | IgG-HBcAb | キャリアの場合は高力価になります |
| HBe抗原 | HBe-Ag | ウィルスが活発に増殖活動をしていることを意味し、感染力の強さも示します |
| HBe抗体 | HBe-Ab | HBVの増殖力は減衰した状態を示します |
| HBV-DNA | HBV-DNA | 増殖するHBVウイルスの量を表します |




C型肝炎ウイルスは現在日本に150~200万人の感染者がいるとされますが、そのうち80~100万人はご自身がC型肝炎ウイルスに感染していることを知らずに生活していると推測されています。



現在、C型肝炎の治療も都道府県の医療費の助成制度があり、この受給証による助成制度を利用することで、ウイルス肝炎の治療費用は月額1-2万円まで軽減することが可能となっています。当院長は肝臓専門医であり、受給者証の診断書作成も行っております。
とくにALT値が31以上、血小板数が15万以下の慢性C型肝炎は肝硬変・肝臓がんリスクが高く、早急に治療を開始することが必要です。まずは、血液・エコー検査など医師の指示を受けてください。
【Recommendation】
非代償性肝硬変を除くすべてのC型肝炎症例が抗ウイルス療法の治療対象となるが、ALT値上昇例(ALT 30U/I超)、あるいは血小板数低下例(血小板数 15万/μl未満)のC型肝炎患者は、抗ウイルス療法の良い治療適応である(レベル 1b、グレードA)。
日本肝臓学会 肝炎診療ガイドライン作成委員会 編:C型肝炎治療ガイドライン(第5版),2016,p3
急性肝炎状態は発熱や吐き気など、かぜ様の症状の後に黄疸や倦怠感が見られだした場合には要注意です。劇症肝炎に至る可能性があり、とくにB型肝炎ウイルスや薬剤性肝炎の急性増悪は劇症肝炎で死亡に至るケースも多く集中治療や肝移植手術が必要となります。


慢性肝炎の状態が数年~10年ほど持続すると、肝臓は固くなりもとには戻らない状態(肝硬変)になります。C型肝炎とB型肝炎、アルコール性肝炎、脂肪性肝炎が主な原因です。肝硬変には、症状のない代償性肝硬変と、症状のある非代償性肝硬変に分かれます。非代償性肝硬変に至ると、黄疸や腹水、足のむくみ、食道静脈瘤(こぶ)を伴い、数年~10年で致死的な状況に至ります。特に、食道静脈瘤は吐血を生じて血圧が低下し、急激な死に至る可能性が高く、胃カメラで半年~1年に1回の頻度で定期的に食道に静脈瘤ができていないかの確認が必要です。
アルコールの過剰摂取は脂肪肝やアルコール性肝炎、肝硬変の原因になります。1日のアルコール飲酒の基準量は1ドリンク=10gとされ、1ドリンク量はビール250ml、チューハイ(7%)180ml、焼酎(25%)50ml、日本酒(15%)80ml、ワイン(12%)100ml、ウイスキー(40%)30mlとなります。また週に2日は休肝日を設けることも大切です。アルコールは胃・小腸で吸収され肝臓で分解されてアセトアルデヒド(毒物)になり、さらにアルコール脱水素酵素(ALDH2)で加水分解され酢酸・水・二酸化炭素になります。しかしALDH2の活性が少ない方は、アセトアルデヒドが体内にたまりやすく顔が赤くなります。また毒物であるアセトアルデヒドは肝細胞や脳細胞、食道を破壊していきます。アルコール依存症でお困りの家族さまや患者様は、いつでも当院で相談をください。


お酒を飲まない人がなる脂肪肝です。メタボリックシンドロームが最近話題になっていますがメタボの肝臓バージョン。食べ過ぎなどで肝臓に中性脂肪が貯まりフォアグラのようになった状態で、健康診断受診者の10%にみられ肝障害の原因の約30%がNAFLDといわれています。ただし最近、脂肪肝のうち10%ぐらいに肝硬変に進展しやすいNASH(脂肪性肝炎)であることがわかっています。NASHではウイルス性肝炎と同様の頻度で肝硬変や肝臓がんが発症しやすく、とくにNAFLDの方で高度肥満、閉経後の女性,AST/ALT比0.8以上,血小板20万以下、はNASHに移行しやすいとされます。また、NAFICスコア(フェリチン、空腹時インスリン、4型コラーゲン7S)が2点以上の場合もNASHに移行する肝繊維化リスクが高いとされ、定期検査や治療が必要となります。 このため脂肪肝のかたも採血などで定期検査が必要であり、もし脂肪性肝炎(NASH)が疑われ、その状態が持続すれば内服治療が必要になりますので、放置せずに肝臓専門医にご相談ください。



中年期に自己免疫(体質)により生じる自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎と言われる特殊な肝臓や胆管が破壊される病気があります。(各種血液検査で、自己抗体や免疫グロブリンIgGが陽性,高値になります)また、薬剤・漢方薬、サプリメントでも薬剤性の肝機能障害を起こしますので、薬剤を内服されている方で肝機能異常を認めた方は必ず医師に申告してください。